よくある質問
Q.東京ミネルヴァ法律事務所の破産問題とは?
過払い金のCMを大体的に展開していた弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所が破産したとの報道がされました。
負債51億~52億円で、弁護士法人の破産としては、過去最大の負債額と話題になっています。
過払い金請求の依頼をしている弁護士法人が破産するなんてことがあるのか、と疑問に感じる人も多いと思いますので、解説しておきます。
動画での解説はこちら
士業事務所の経費
知り合いの税理士などから、士業事務所で、この51億円という負債は、おかしくないかという声が上がりました。
多くのビジネスと違い、弁護士、税理士、社労士、司法書士などの士業事務所では、物をたくさん仕入れて売るとか、いろんな機械を買って設備投資をするというようなビジネスではありません。
そのため、このような資金の必要性はなく、負債額が大きく膨らむというのはおかしいというのが税理士さんの感覚でしょう。
通常、経費として、一番大きいのは弁護士やスタッフの給料のような人件費でしょう。
また、事務所を借りたりする家賃あたりが大きい支出ではないかと思います。
今回の、東京ミネルヴァ法律事務所ではテレビCM、ラジオCMをしていたということで、多額の広告費をかけていたようです。そのあたりの費用もかかっていたでしょう。
ただ、このような経費的な感覚では、多額の借金を負うことにはなりません。
ビジネスをしていて、収入よりも支出の方が多いならば、広告費削減など経費削減、リストラなど業務を縮小するのが通常です。
大きな赤字を長期間、垂れ流すということは法人としてはないはずです。
今回のような新型コロナウイルス騒動で裁判所が動かなかったという司法業界では想定外の事態により、売上が激減した事務所はあるとは思いますが、一時的な現象でしょう。
このような場合に、一時的な運転資金を借りることはあっても、通常、借金してまで経営することは考えにくいです。
自己破産ではなく債権者申立
破産決定がされたという報道ですが、これは自己破産ではありません。
弁護士法人が自ら破産します、という自分で破産手続きをしたのではなく、債権者からの申し立てと報道されています。
この申し立てをしたのは弁護士法人が所属する第一東京弁護士会。
その債権は、弁護士会費。
会費が未納である、会費債権という理論で債権者申立をしたという内容です。
弁護士会が会費を払わないというだけで、破産申立をするなんてあまり聞かないです。
懲戒処分にはしますが、わざわざ破産申立という大変手間がかかる行為に出たのは、依頼者からのクレームなどが弁護士会に多数入っていたのではないかなと推測できます。
この債権者申し立てという特徴からすると、自分の法律事務所でもないので、債務や財産情報がはっきりしないことが多いです。
債権者申し立ての場合には当初報道されていた負債何億という数字が大きく変わることもあります。
それは仕方がない構造ですので、現在、報道されている約51億円という数字が正しいものかはわかりません。
負債額は破産管財人によって調査され、大きく変わる可能性もあります。
決算時点での負債?
報道の中では、51億とか52億というのは、2019年3月決算の決算書の内容みたいな話も出ています。
そうだとすれば、現時点で変動している可能性は高いですね。
負債とは借金とは異なる
負債51億円というと、借金をイメージしてしまう人が多いかもしれません。
銀行から借りたようなイメージを持つかもしれません。
そのため、ネット上では、無駄遣いとか豪遊という憶測が飛び交っています。
しかし、負債には、銀行等から受けた融資、借金以外に、未払いのものであれば色々含まれます。
CMなどを流して未払広告費があれば、それも含まれます。
人件費未払いがあれば含まれます。
コンサル費用のような外注費も未払いがあれば含まれます。
おそらくという推測になりますが、この負債の中には被害者の預かり金を返すという債務が大部分を占めているのではないでしょうか。
預かり金債務も負債です。
人からお金を預かっていて、それを返していないという債務です。
過払い金やB型肝炎給付金のように、業者や国から回収したお金を預かって、依頼者に返していないという場合、預り金になります。
これらの活動を大体的にしていて、そうとうの集客をしていたのであれば、預り金が何十億ということも不自然ではありません。
預かり金のまま、返していない、返還が遅れていたのではないかと推測されます。
債務超過とは違う
今回の負債51億円というのは、債務超過が51億円、財産より負債が51億円多いというわけではありません。
プラスの財産も当然ながらあるはずです。
預かり金が債務の大半だとすれば、預金口座に一定額はあるはずです。
マイナス51億円という話とは違うでしょう。
ただ、破産決定が出ているということは、マイナスであることは間違いないのでしょう。
今後、破産管財人が、この財産の調査もして、預かり金の分配などをしていくことになるでしょう。
この預かり金に関しては、通常は、自分の口座と分けて管理しなければなりません。
名義も「預かり口」とか「預かり金口座」のような名称にして届け出ないといけないのです。
これが守られていないとか、その口座の管理が杜撰で使い込まれちゃってるとか、コンサル費用等、外部に流れてしまっているような場合には、分別管理上の問題になってくるでしょう。
社員弁護士は無限責任を負う
株式会社の場合、会社の債務と代表取締役の債務は違います。
会社が債務を負っていても、代表者は保証人になっていたり、会社法上の責任を負わない限り債務を負いません。
これに対し、弁護士法人の社員弁護士は、法人の債務についても無限責任を負います。
弁護士法人の破産手続きで十分な回収ができなかった場合、社員弁護士の責任問題に発展することになるでしょう。
破産手続きの趣旨
破産手続きでは、破産者の財産が管財人の管理下に置かれます。
このまま放置しておくと、財産がさらになくなってしまいそうなときに、保全の効果を狙っての破産申立もあります。
おそらく、今回の弁護士会による破産申立も、財産の保全、破産管財人による調査が狙いでしょう。
弁護士会でも、相談窓口を設けるなどしており、事前に準備したうえでの破産申立であることがわかります。
依頼者の方は、依頼業務がどうなっているのかの確認を破産管財人経由で知り、まだ弁護士業務が残っているなら、他の弁護士に切り替え、預り金返還だけの問題であれば、管財人の対応を待つ、ということになろうかと思います。
過払い金の返還態様
これから過払い金の依頼をしようとする場合には、宣言を思い切りしている事務所では、こういうリスクがあることは頭に入れておいた方が良いかもしれませんね。
依頼時には回収ができたら、その都度精算できるか、個別に返金されるかどうかを確認しておいた方がいいのかなと思います。
間違っても、テレビでCM流れているから安心、なんて考えはやめましょう。
違法金利をとっていた消費者金融がCMを流していたのですから。
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