過払い金と司法書士
司法書士と弁護士の違い
過払い金の相談を考えている方から、される質問の中に、「過払い金の相談を使用と思っているが、弁護士と司法書士は何が違うのか?」というものがあります。
法律的には、認定された司法書士の方は、裁判所の中で、簡易裁判所での代理権はあります。
裁判を起こす際、金額によって地方裁判所か簡易裁判所に起こすかが変わってきます。
ざっくり言うと、金額が大きい事件は地方裁判所、比較的少額な事件が簡易裁判所となります。
弁護士は、簡易裁判所、地方裁判所のいずれも代理人として活動することができます。
司法書士は、簡易裁判所のみです。
そのため、過払い金の計算をしてみたら、金額が大きくなり地方裁判所で対応すべき事件となった場合、司法書士は代理人として活動することができません。
ジン法律事務所弁護士法人では、このような事件について、司法書士さんから途中から引継ぐこともあります。
この場合、当初は司法書士が入って対応していたものが、弁護士事務所に引き継ぎ、対応者が変わることになります。その際、チェックのために利息制限法の計算もやり直すことも多いです。結果的に、時間のロスになります。
皆さんの中でも混乱する方もいます。
ジン法律事務所弁護士法人の感覚や、引継を受けた過払い金の事件を見るかぎり、弁護士より司法書士の方が費用が安いという訳でもありません。
あくまで個別の事務所ごとの事情で違うようです。
気になる方は各事務所を調べてみると良いでしょう。
司法書士代理権を超えた過払金和解についての最高裁判決
最高裁平成29年7月24日第一小法廷判決は、過払金と司法書士の代理権について判断しています。
事案としては、利息制限法所定の制限を超える利息について、計算をすると、過払金約330万円の計算に。
本件過払金について、司法書士が貸金業者との間で和解交渉。
200万円の支払を受ける内容の和解。
それ以外には何らの債権債務がないことを相互に確認することを内容とする裁判外の和解契約を締結。
司法書士が代理した和解は、過払金の額が司法書士法3条1項7号に規定する額である140万円を超えるため、弁護士法
72条に違反するものでした。
その後、借主は、本件和解契約は無効として、貸金業者に不当利得返還請求権に基づき、本件過払金の返還等を求めて訴えを提起。
第一審:借主の請求を棄却。
控訴:借主は、控訴審係属中に、破産手続開始の決定を受け、破産管財人が訴訟を承継。
和解契約は無効。借主の請求を認容。
貸金業者が上告。
最高裁判決
破棄自判(控訴棄却)
以下の内容で、この和解は無効ではないと結論付けました。
認定司法書士が、報酬を得る目的で業として司法書士法3条1項7号に規定する額である140万円を超える過払金の返還請求権につき裁判外の和解をすることについての委任契約を締結することは、弁護士法72条に違反するものであって、その委任契約は、民法90条に照らして無効となると解される(最高裁昭和37年(オ)第1460号同38年6月13日第一小法廷判決・民集17巻5号744頁参照)。
上記の場合、当該委任契約を締結した認定司法書士が委任者を代理して裁判外の和解契約を締結することも、弁護士法72条に違反するものであるが、その和解契約の効力については、委任契約の効力とは別に、同条の趣旨を達するために当該和解契約を無効とする必要性があるか否か等を考慮して判断されるべきものである。
弁護士法72条の趣旨は、弁護士の資格のない者が、自らの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とすることを放置するときは、当事者その他の関係人らの利益を損ね、法律事務に係る社会生活の公正かつ円滑な営みを妨げ、ひいては法律秩序を害することになるので、かかる行為を禁止するものと解される
同条に違反する行為は、処罰の対象となるほか、認定司法書士による上記行為については懲戒の対象となる上、弁護士法72条に違反して締結された委任契約は無効となると解されるから、当該認定司法書士は委任者から報酬を得ることもできないこととなる。
このような同条の実効性を保障する規律等に照らすと、認定司法書士による同条に違反する行為を禁止するために、認定司法書士が委任者を代理して締結した裁判外の和解契約の効力まで否定する必要はないものと解される。また、当該和解契約の 当事者の利益保護の見地からも、当該和解契約の内容及びその締結に至る経緯等に特に問題となる事情がないのであれば、当該和解契約の効力を否定する必要はなく、かえって、同条に違反することから直ちに当該和解契約の効力を否定するとすれば、紛争が解決されたものと理解している当事者の利益を害するおそれがあり、相当ではないというべきである。
以上によれば、認定司法書士が委任者を代理して裁判外の和解契約を締結することが同条に違反する場合であっても、当該和解契約は、その内容及び締結に至る経緯等に照らし、公序良俗違反の性質を帯びるに至るような特段の事情がない限り、無効とはならないと解するのが相当である。
契約が無効とならない理由
過去の判例によれば、弁護士法72条に違反して締結された委任契約は、民法90条に照らして無効とされていました。
この判決は、それにも関わらず、認定司法書士が弁護士法72条に違反する範囲で、代理人として和解した場合であっても、「当該和解契約は、その内容及び締結に至る経緯等に照らし、公序良俗違反の性質を帯びるに至るような特段の事情がない限り、無効とはならない」としています。
弁護士法の実効性を確保するためには、そこまでする必要がないというのが理由になっています。
認定司法書士の違反行為については、刑事罰の対象となること、司法書士法2条違反で懲戒の対象となること、委任契約が無効となり委任者から報酬を取得できないこと、などによって、実効性が確保できるでしょう、という結論です。
これにより、契約当事者の意向を無視してまで和解契約を無効とするまでの必要はないと判断されたのです。