過払い金と和解の判決
東京高裁平成27年10月15日判決
過払い金と和解の判決
過払い金の請求前に、和解をしてしまっていて、その効力が問題になったケースです。
貸金業者が、借金が残っている状態で借主に和解を持ちかけます。
「借金が約5万円あるけれど、残り2万8000円を支払ってくれれば和解でゼロにしてあげる」という提案をします。
利息制限法や過払い金のことを知らない借主は「ラッキー」と思って、和解契約書や合意書に署名します。
そこには、「お互い債権債務がないことを確認する」という清算条項があります。
数年後、利息制限法や過払い金のことを知った借主が取引履歴を取り寄せて、グレーゾーン金利の計算をしてみると、和解をした時点では、もう借金がなくて、過払い状態であったことがわかりました。
そこで、過払い金の請求をします。
ところが、貸金業者は、「和解して、お互い債権債務がないって確認しているんだから、過払い金の請求は認めません」と争ってきます。
このような和解の効力については、多くの裁判所で争われています。
錯誤で和解を無効にするケースもあれば、貸金業者の主張を認めるケースもあります。
そのようななかで、東京高裁は、和解をしていても過払い金の請求ができるとしました。
・借主が過払金等が発生したことについて全く認識していなかった
・過払金の額について本件和解において借主が何らかの譲歩をした事実は認められない
・清算条項は、定型的な文言として置かれたものにすぎない
などの点を取りあげ、「本件和解は,当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約したもの(民法695条)ではなく,単なる債務弁済契約と見るべきであって,民法上の和解と認めることはできない。」
と和解の合意ではないという判断をしました。
和解がされていないのだから、過払い金の請求はできるという結論になります。
貸金業者から和解の主張をされた場合には、チェックしておくべき裁判例といえるでしょう。