利息制限法と和解の判決
大阪高裁平成31年2月1日判決
利息制限法と和解の判決
過払い金の元となる利息制限法計算と和解に関する裁判例です。
利息制限法違反の金額での和解の有効性が争われたケースです
被告は、新生パーソナルローン株式会社です。
利息制限法違反の高い金利での計算による借金が約198万円ありました。
分割払いにした裁判外の和解をしました。
しかし、利息制限法の計算をすると、その時点で本来の残債務は85万円でした。
そこで、過去に和解の効力が争われました。
貸金業者は有効と主張、借主は錯誤無効、公序良俗違反による無効を主張。
簡裁の一審、地裁の二審とも和解の効力を認め、貸金業者の主張を認めました。
これに対して借主が上告し、本判決では、借主の主張を認めています。
すなわち、和解は無効と判断。
判決の中では、その和解は、約定利率による残債務の総額の支払義務のあることを前提とするものであり、弁済すべき残債務額については民法695条にいう「争い」の対象になっておらず、残債務の総額について錯誤があり、錯誤について重過失もないと判断されました。
和解の効力を争い、過払い金請求をする場合にも参考になる裁判例でしょう。
「原審の適法に確定した事実関係によれば、本件契約は、被上告人が約定利率、約定遅延損害金率に基づいて算定した本件契約日における貸金元金198万9913円の支払義務を前提として、その分割支払いを定めるとともに、上告人が約定どおり分割支払いをした場合には、被上告人がその余の支払義務を免除するという趣旨で締結された合意であると解される。
そうすると、本件契約において、弁済すべき残債務額については、民法695条にいう「争い」の対象となっていなかったと認められる。
そして、前記確定事実によれば、本件契約当時、それまでの弁済を利息制限法に従って充当計算した場合の残元本債務は、85万0314円であったというのであるから、本件合意の前提となった残元本債務額とは大きな差があり、上告人がこのことを知っていれば、本件契約を締結するはずのなかったことは明らかである。したがって、本件契約は、その前提事実について錯誤があり、その錯誤の内容に照らすと要素の錯誤に当たるといえるから、無効というべきである。
したがって、この点に関する原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある(なお、被上告人は、上告人が取引履歴の開示を請求せず、その確認を怠ったなどの点で、民法95条ただし書所定の重過失があるなどと主張するが、被上告人は、最高裁判所平成18年1月13日第二小法廷判決〔民集60巻1号1頁〕によって、貸金業者がみなし弁済規定の適用を主張することが困雌となった状況において、上告人に対して本件契約に係る契約書を送付して本件契約を持ちかけたことがうかがわれ、上告人は、本件契約前に取引履歴の開示
を受けたことも、弁護士等に相談したこともなかった状況において、制限利率により引き直し計算した本件カードローン契約の残債務額が、上記契約書に記載されている金額よりも大幅に少ないことを認識せず、同契約書の記載内容を信じて本件契約を締結しただけであるから、上告人に重過失があるとはいえない。)。」