
債権譲渡と借り換えの過払金計算の判決
大阪高裁令和元年6月13日判決
タイヘイ債権譲渡とアイク取引の過払金
被告はCFJ合同会社。
CFJにありがちな、債権譲受の際の過払金の計算方法が争われました。
判決では、実質的に契約の切り替えだとして、一体計算を採用。
高裁レベルでの判断となり、同種の争いでは使える内容でしょう。
タイヘイ取引からのアイク取引充当は?
CFJという会社は、いろんな会社が集まってできた会社です。
過払金で有名な会社としては、ディックファイナンスやアイクがあります。
このうち、アイクについて、タイヘイという会社からの債権譲渡があり、タイヘイ時代の過払金をどう考えるかという問題があります。
このように、債権者が変更になった際の過払金の計算方法については、一部は最高裁判決も出たのですが、まだ争いは多いです。
今回も、タイヘイ取引に係る過払金をアイク取引に係る借入金債務に充当する旨の合意があったかどうか、その評価が争われています。
タイヘイ取引からアイク取引移転の実態とは?
まず、取引内容について事実確認をしましょう。
借主は、CFJから、債権譲渡の事実を告げられます。
その際、このままタイヘイ取引を続けても借入れをすることができないことから、タイヘイ取引をCFJとの取引に切り替え、CFJとの間で、アイク基本契約を締結すること及びタイヘイ取引の残債務については、アイク基本契約に基づく借入金で弁済してタイヘイ取引を終了させることを提案されます。
借主は、これを承諾。
そこで、借主は、CFJとの間で、同日、アイク基本契約を締結。
その際、アイク基本契約に基づき、同日に20万8114円を借り入れ、これを現実の金銭の授受を伴うことなく、タイヘ
イ取引に係る残元金20万8114円の弁済に充当すること及びタイヘイ取引に係る同日までの未収利息1498円については、アイク取引に係る初回の返済の弁済金の一部を上記タイヘイ取引に係る未収利息の弁済に充当することを合意します。
実際にも、上記20万8114円の借入れについて上記のとおりの処理がされました。
アイク取引だけを見ると、初回の借入金は交付されておらず、さらに、アイク取引で最初に返済したお金の一部は、タイヘイの利息支払いにあてられていることになります。アイクに払ったのに、アイクの債務が減っていないという関係になります。
タイヘイ時の過払金は?
そして、タイヘイの取引では過払金が発生している計算になります。
具体的には、タイヘイ取引については、上記20万8114円の弁済までは、利息制限法1条1項所定の、利息の制限額を超えて利息として支払った部分を元本に充当しても過払金が発生していませんでした。
しかし、上記20万8114円の弁済により、10万2483円の過払金が発生したのです。
アイク初回返済の約定違反は?
アイクへの初回返済のうち、一部がタイヘイに払われるとすると、その分、アイクへの返済額は減ることになります。
これが、アイクとの契約での約定違反ではないかという点も問題視されました。
借主は、CFJに対し、アイク取引に係る初回の返済として8000円を弁済し、CFJは、上記合意に基づき、そのうち1498円を上記タイヘイ取引に係る未収利息の弁済に充当しました。
アイク取引についてみると、アイク基本契約所定のCFJに対する融資残高20万8114円に対応する最低返済額8000円であるので、上記1498円をタイヘイ取引の未収利息に充当することで、上記最低返済額に満たないこととなります。
しかし、CFJは、アイク基本契約の約定違反と扱いませんでした。
アイクとの取引では、最低8000円を入金する約束だったところ、初回支払の一部がタイヘイに払われるとすると、アイクへの支払金は、その分減ります。普通なら、アイクから契約違反だという主張が出そうなものですが、このケースではそのような主張がなかったと認定しています。
タイヘイ取引とアイク取引の類似性
タイヘイ取引とアイク取引とは、タイヘイ取引が元利定額リボルビング方式であり、アイク取引が元利定額残高スライドリボルビング方式であるほか、契約極度額、返済期日等が異なるが、いずれもリボルビング方式であり、約定利率もタイヘイ取引が33.40%であるのに対し、アイク取引が29.20%であり、大きな差違もなかったと認定しています。
過払金の計算の際に、基本契約が異なる場合の一体計算を認めるかどうかの判断時に、2つの契約の類似性を比較する判断がされることも多いです。
全取引条件が同じであればわかりやすいのですが、一部は同じ、一部は違うという場合、裁判所の評価はまちまちです。
今回も、違う点はあるものの、大きな差異はないという認定です。
積極的な理由にはなりにくいですが、消費者金融側から反論されたので、理由でも触れたものと思われます。
実質的には借り換えであると認定
上記の各理由から、アイク取引は、タイヘイ取引の実質的な借換えであることが明らかであり、アイク取引を開始するに至った経緯、アイク取引とタイヘイ取引の各契約条件等も考慮すると、本件のような場合、当事者、特に、借主であ
る借主は、複数の権利義務の関係が発生するような事態を生ずることは望まないことが通常であると考えられ、当事者間に充当に関する別異の特約が存在するなどの特段の事情もうかがわれず、むしろ、貸主であるCFJも、アイク基本契約締結に際し、借主との間で、本件会計処理を合意し、これに基づき、本件会計処理すなわち、アイク基本契約の最低返済額の約定に反してまでも、アイク取引に係る弁済金でタイヘイ取引の未収利息を回収してタイヘイ取引を終了させる処理をしており、タイヘイ取引とアイク取引とを事実上一個の連続した貸付取引として処理しているのであるから、借主とCFJとの間で、タイヘイ取引に係る過払金をアイク取引に係る借入金債務に充当する旨の合意が存在するものというべきだと判決では認定しています。
当事者双方の意思が借り換えだろうという認定です。
CFJの会計処理についての反論
CFJは、本件会計処理は、重利となることを回避することを理由とするにすぎないと主張していました。
これについて、判決では、タイヘイ取引とアイク取引とが別個の取引であれば、アイク取引に係る借入金をタイヘイ取引に係る利息の弁済に充当しても、上記アイク取引に係る借入金の利息が重利となることはないのであり、CFJが重利となることを回避するために本件会計処理をしたのであれば、CFJとしても、上記タイヘイ取引に係る未収利息の発生する貸金債権とその弁済に充当されたアイク取引に係る貸金債権とが実質的に同一であるとして扱っていることを意味するのであるから、上記主張は、むしろ上記結論を裏付けるものというべきであるとしました。
主張事態が、実質的な一体性を前提にするものじゃないのか、という考えです。
契約上の地位の承継は?
CFJの反論として、CFJがタイヘイからタイヘイ取引における貸主としての地位を承継していないと主張していました。
契約上の貸主の地位が移転していれば、過払金の返還義務も承継しそうですが、そうではないから、承継しないという主張です。
しかし、CFJがタイヘイからタイヘイ取引における貸主としての地位を承継していないことは上記過払金の充当合意の存在を妨げるものではないので、上記主張は、採用することができないとして、判決では、この主張も否定されました。
タイヘイ取引に係る過払金返還請求権の消滅時効は?
このような契約や計算の一体性が争われるのは、消費者金融側が過去の過払金を消滅時効だと主張したいからです。
本件でも、契約を切り離して、タイヘイの過払金は消滅時効だと主張されています。
しかし、実質的な借り換えだとし一体計算を採用する場合には、消滅時効の主張は否定されます。
タイヘイ取引に係る過払金をアイク取引に係る借入金債務に充当する旨の合意が存在するから、タイヘイ取引に係る過払金返還請求権は時効により消滅することはないとされました。
控訴棄却
本件は、地裁で借主側の請求を認め、CFJが控訴し争っていた事件ですが、結論としても、控訴棄却しています。
借主側が主張する一体計算を採用した形となっています。
特段の事情も認められないとして、過払い利息も認めています。
タイヘイからのCFJで過払金が争われている場合には、参考になるかと思います。