空白期間と過払金計算の判決
東京地方裁判所令和元年10月3日判決
SMBCコンシューマー・ファイナンスの過払金と空白期間
プロミスブランドを展開するSMBCコンシューマー・ファイナンスに対する過払金請求で、空白期間があり、取引の分断が争われたケースです。
旧・三洋信販取引です。
約3年の空白期間があったものの分断を否定した、東京地方裁判所令和元年10月3日判決の紹介。
事案の概要
平成6年2月に取引を開始。
平成11年12月に完済。
平成14年11月に基本契約は維持したまま取引を再開。
約定利率は33%から29.2%へと変更(ただし、貸金業法改正による)。
いわゆる基本契約が同一である中での分断及び第一取引についての消滅時効が問題になったケースです。
取引がない空白期間で、頻繁に再貸付の案内があったり、勧誘の電話を何度もしていた事情もありました。
裁判所は、具体的な事実関係から、約3年の空白期間があっても、過払金充当合意を肯定、これにより消滅時効も否定したケースです。
プロミスの各取引の内容
本件取引が1個の基本契約に基づく取引であることは当事者間に争いがありません。
そして、SMBCコンシューマーファイナンスは、本件取引が平成6年2月21日から平成11年12月9日までの本件取引1と平成14年11月26日から平成21年9月11日までの本件取引2とに分断されると主張しています。
本件取引については、平成11年10月31日に40万円が、同年12月9日に4493円が弁済されて約定借入残高がゼロになっていること、それから3年弱が経過した平成14年11月26日に4万円の借入れがされて取引が再開されていることが認められています。
空白期間における勧誘は?
分断が認められるかどうかの諸要素の一つに、空白期間における勧誘、再借り入れの経緯という点があります。
この点について、判決では、本件取引1終了後も、SMBCコンシューマーファイナンスは、原告に対し、ダイレクトメールをしばしば送付しており、その中には原告のみに向けた勧誘文書を含むものもあったと認定。
一般的な勧誘より強い個別勧誘がされていたことが認定されています。
勧誘の電話も何度か架け、原告又はその妻が対応していたことが認められるから、取引がされていなかった期間が3年近くに及んでいることを踏まえても、本件取引に係る基本契約に基づく過払金充当合意が一旦消滅するに至ったと認めるには足りないとしました。
そうすると、本件取引2の契約条件が本件取引1から一部変更されていること等の他の事情を考慮しても、本件取引1と本件取引2とが別個の取引であり、本件取引2に係る借入金をもって本件取引1により生じた過払金返還債務の弁済に充当する旨の過払金充当合意がなかったとは認められないと充当合意の継続を認定。
したがって、SMBCコンシューマーファイナンスの上記主張を採用することはできず、本件取引1により生じた過払金返還債務につき消滅時効は完成していないと結論付けました。
新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった後の期間の経過による消滅時効は?
分断がなかったとしても、さらに、第2取引の消滅時効も争われました。
この点については、まず、充当合意の趣旨を解析。
本件取引に係る基本契約は過払金充当合意を含むものであったと認められるところ、一般に、過払金充当合意には、借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点、すなわち、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし、それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず、これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当であるとしています。
そうすると、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、同取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害となるというべきであり、過払金返還請求権の行使を妨げるものと解するのが相当としました。
結論として、本件取引のように、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消我貸借取引においては、同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は、過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り、同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当であると、最高裁に従った判断をしています。
SMBCコンシューマーファイナンスの主張を排斥
SMBCは、特段の事情の存在を主張するものと見られるものの、平成19年10月29日以降の時点で原告がSMBCコンシューマーファイナンスに対し新たな借入れをしない意思を表明したことを認めるに足る証拠はないと認定。
最終貸付け後長期にわたり弁済しかされていない状況があったことをもって上記意思が表明されたと認めることはできないとしました。
また、本件取引につき新たな借入金債務が発生する可能性はなお否定されていなかった以上、上記の状況があったことのみをもって新たな借入金債務の発生が見込まれないことが客観的に明らかになったということもできないとしています。
結論として、特段の事情の存在は否定。
本件取引により生じた過払金返還債務に係る消滅時効は最終取引日である平成21年9月11日から進行することとなるとしました。
消滅時効の主張を排斥。
取引が続いていても、借り入れが止まり、返済だけが最後に続いているような取引で、業者から主張されやすい点ではありますので、チェックしておきましょう。
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