ライフ過払い利息の判決
宮崎簡易裁判所令和元年12月17日判決
ライフカードの過払金と過払い利息
ライフカードの過払い金計算で、過払い利息が争われた宮崎簡易裁判所令和元年12月17日判決です。
ライフカードについては、ライフの会社更生による免責問題があります。
ただ、本件では、その時期の取引の問題はありませんでした。
問題となったのは、引き落とし停止が間に合わずに引き落とされてしまった支払について、過払い利息がつくかどうかという点です。
金額的に大きくはありませんが、理論上、他の争点に発展する可能性もある問題ではあります。
事案の概要
旧ライフ債権でキャッシング取引。
返済時に引き落としの設定をしていたところ、引き落とし直前に振り込み返済をし、そのまま予定どおりの引き落としがされてしまった。この引き落とし分は過払いとなる計算。
この過払い分について、悪意の受益者によって過払い利息がつくかどうか、その計算方法が争われました。
免責後取引に係る過払金発生の有無について
ライフカード特有の問題として、免責の問題があります。
ただ、本件では、その時期は問題にならず、免責後の過払い金が問題になっています。
本件取引は利息の定めのある基本契約に基づいてなされたものであり、その取引の一部である免責後取引における約定利率は利息制限法所定の制限利率を超ていたものと推認されるとしています。
これを利息制限法所定の制限利率に引き直して計算すると過払金15万8535円、過払金利息1325円が発生するという内容でした。
被告の悪意の受益者性
貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが、その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には、当該貸金業者は、同項の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り、法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者、すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきであるとしています。
悪意の受益者については、過払い利息を否定するため形式的に争う業者は多いですが、最高裁判決による推定理論が働きます。
被告は、特段の事情について何ら具体的な立証をせず、本件全証拠によっても上記特段の事情があるとは認められない、訴外ライフ及び被告は、悪意の受益者であると推定されるとして、最高裁通りの結論としています。
本件引落・本件入金の不当利得該当性及び被告の悪意の受益者性
被告としては、平成25年12月30日に本件引落がなされる処理をしていたところ、その直前に一括返済がなされ債務が完済となったのであるから、その後に予定されていた本件引落は必要のないものとなりました。
それにもかかわらず、そのまま引き落としがなされれば、法律上の原因なくして被告の利得において原告に損失が発生する結果となるため、被告にとって不当利得となることは明らかです。
そうすると、本件引落がなされた時点で被告は本件引落による6000円が不当利得となることを知っていたことになります。そして被告が主張する事情を踏まえても、金銭債権には不可抗力をもって抗弁となし得ないことから、被告は悪意の受益者と認められるとしています。
本件引落は、免責後取引に係る約定利率による債務の完済後になされたものであるが、一旦は免責後取引に係る返済として引き落とされたものであり 、後に被告において預り金として処理されたとしても免責後取引に係る返済とみられるとしています。
この入金は、免責後取引に係る貸付ではないが、本件引落に密接に関係する処理であり 、本件免責後取引に係る過払金に充当することが当事者の合理的意思であると解されるとしています。
引き落とし停止が間に合わなかった場合の返金についても、過払い利息の発生があるという結論となります。
取引履歴不開示による損害
過去の取引履歴不開示について損害賠償請求もしていましたが、こちらは否定されています。
なかなか認めてもらうのは難しいですね。
前提事実によれば、被告が原告代理人から本件取引に係る取引履歴の開示を求められ、その後1か月程度で平成6年1月28日以降の取引職歴が開示されたことが認められるとしています。
原告が被告に対して本件訴訟で請求している過払金に係る取引は、被告に事業譲渡した訴外ライフが旧会社更生法241
条に基づき免責を受けた取引以降のものであり、平成6年1月28日よりも前の取引履歴不開示は、本件訴訟追行に関する直接の影響は認められないとしています。
原告が原告代理人を介して被告に対し本件取引の履歴を求めたのは、本件訴訟の提起、追行のためと考えられるとし、そうであれば、上記取引履歴不開開示によって原告が精神的苦痛を被ったとは認められない、この損害と因果関係があるとされる弁護士費用も認められないとして否定されています。
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