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和解と過払金の判決

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大阪地方裁判所令和3年3月25日判決

 

アイフル和解署名と消滅時効

旧ライフ時代(アイフル)に、和解書らしき書面に署名をしていたことで、過払い金の請求が時効になるのではないかと争われた事例です。

アイフルへ過払い金請求を考えている人で、そのような書面に署名してしまっていたという人には使える裁判例です。

 

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2022.2.25

 

過払い金と和解契約

大阪地方裁判所令和3年3月25日判決です。

被告はアイフル。旧ライフの取引です。

原告借主は、利息制限法による計算後の過払い金を請求。

アイフルは消滅時効の主張をしました。


アイフル過払い金と和解書の時効問題


被告アイフルとの合併前の、株式会社ライフについての取引が問題となりました。

ライフは、平成20年7月1日頃、原告借主に対し、計画どおりに支払をしていれば原契約に基づいた一括請求を受けることはないが、計画どおりの支払がなかった場合には、計画はなかったものとし、原契約に基づいて計算された遅延損害金を含めた債務を支払ってもらう旨などが記載された「お支払計画内容の説明(重要)」と題する書面及び返済計画が
記載された和解書を交付

原告借主が、それらに署名・押印して返信したことが認められるとしています。

被告は、これらの事実等から、基本契約に基づく新たな借入金債務が発生する余地はなくなっており、特段の事情が認められる旨主張。

 

裁判所はアイフルの時効主張を否定

しかし、この書面には、原契約を変更するものではない旨の記載がある上、貸付停止をするなどの記載はなく、上記の証拠によっても、被告において、原告借主に対する貸付停止措置をとったと認めるには足りないし、仮にそのような措置が取られていたとしても、信用状態が回復するなどした場合には新たな貸付けが再開されることはあり得ると考えられることからすると、基本契約に基づく新たな借入金債務が発生する余地はなくなっており、それが客観的にも認識可能であったと認めるには足りないとしました。

よって、特段の事情があったとは認められず、消滅時効は、取引が終了した時点から進行するものと解すべきであるとしました。

そうすると、最終取引(平成29年4月)から10年の経過は認められないから、被告の消滅時効の主張には理由がないとし、原告借主による過払金請求を認めています。

過払い金請求と和解

消費者金融やクレジット会社に対し、利息制限法違反の利息を支払っていたことで過払い金請求をした場合に、消滅時効の主張がされることが多いです。

その際に、過去にした和解を根拠に、そこから10年たてば時効だという主張がされることもあります。

このような主張を認める裁判例もありますが、和解書の内容をしっかり精査して反論できるところはしておいた方が良いでしょう。

本件のように、再開可能性が否定されていない場合には、その旨の主張をしておくほうが良いです。

本件の「お支払計画内容の説明」には、原契約を変更するものではないという記載があること、貸付停止にするという記載はないこと、記載の金額を完済すれば残債務を免除するという記載はあるが、完済しても貸付けを再開しないという記載はないことから、完済すれば貸付けを再開することはあり得ると判断されています。

 

消費者金融のなかには、債務の確認条項、期限の利益の再付与条項、通常利息や遅延利息等の免除条項、返済金の充当順位などの条項も不明な書面に署名をさせている事例も多いです。

内容が極めて不明瞭な文書の場合には、そこを突いた主張をしておきましょう。

 

 

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