HOME 〉裁判例 〉プロミス事業ローン借り換えと過払金

プロミスの過払金の判決

無料相談の予約、お問い合わせは 0120-141-961

大阪地方裁判所令和6年1月15日判決

 

プロミス過払い金と事業ローン借り換え

プロミスに対する過払い金で、事業ローンへの借り換えがあった際に、借主に有利な計算方法が採用された判決がありましたので、解説します。

悪意の受益者の過払い利息の利率も基本は年5%とされており、この点でも注目です。

大阪地方裁判所令和6年1月15日判決です。

 

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2024.5.29

 

プロミス過払い金判例の概略

プロミス相手の過払い金の裁判例です。

通常のカードローンなど消費者ローンから、事業者ローンに切り替えた場合の過払い金計算が争点になっています。

事業者ローンでは、年利8.5%と利息制限法の範囲内です。消費者ローン部分では、利息制限法を上回る利息を払っていたため、そちらの取引での計算がどうなるのか争われました。

裁判所は、事業者ローンの契約を、準消費貸借契約とし、この契約が成立する範囲を一定額とする内容の計算としました。

結果としては、消費者ローン・事業者ローンを一体として計算したものと同じになっています。

 

 

 

 

プロミス借金の内容

消費者ローンの約定残高165万4594円。

これを事業者ローン(無担保、利率8.5%、リボ取引、極度増)で借り替えて返済

借主は、10年後に死亡、相続人が完済し過払い金請求をしたというものです。

 

判決は、借替えにより準消費貸借が成立するのは引直し計算後の52万9820円のみとして、一連計算と同様に計算し、民法改正後の返済分にも5%の過払利息(相続人の第三者返済分のみ3%)を適用して、ほぼ満額を認容。

 

契約切り替えの整理

消費者ローンから事業者ローンへの借り替えが過払い金で問題になる事例も多いです。

その場合、一体計算ができるのかという問題点は、借り換え時にどのような計算結果となるかで整理する必要があります。

・過払金充当合意の有無

・準消費貸借の成立範囲

という二つの問題点があり、分けて考える必要があるとされます。

つまり、借替え時に、利息制限法で計算をすると過払いになっているのか、債務は減るけど残っているのかという問題です。

今回の事例では、消費者ローンの約定残高165万4594円であったところ、利息制限法の引直し計算後の残高は52万9820円でした(差額112万4774円)。

借り換え時点では、債務残高があって過払金未発生でした。

そのたえ、過払い金充当合意の問題ではありません。

準消費貸借の成立範囲が問題となります。

裁判所は、引直し計算後の52万9820円についてのみ準消費貸借契約が成立するとし、一連計算と同じ結果となっています。

 

プロミスの主張

この点、プロミスは事業者ローンの当初実行額の全額が消費者ローンの返済に充てられると主張。

消費者ローンの方の差額112万4774円は「消費者ローンにおける」過払金となり時効により消滅したと主張しました。

そして、事業者ローンは制限利率内の取引であり過払金が発生する余地はないとの主張です。

裁判所は、準消費貸借が成立するのは「制限利率に引き直して計算した結果なお残存することとなる金額」(52万9820円)のみであるとして、プロミスの主張を排斥しています。

 

さらに、プロミスは、55年最判(準消費貸借の成立範囲を引直し計算後の残高に限定する)や充当合意を排斥する論理として、事業者ローンへの借替えは準消費貸借と和解の混合契約であると主張

しかし、民法695条(和解)にいう「争い」が認められないとして排斥されています。

プロミスは、この和解の主張を裁判ではよく展開してきます。

 

裁判所の判断

「第1基本契約及び第2基本契約のいずれにおいても、Aは被告から、借入限度額の範囲内において繰り返し金銭を借り入れることができ、借入金の弁済は、借入金債務の残額の合計を基準とする一定額の支払いをすることとされ、利息の額は、前回の弁済後の残元金に対する当該弁済日の翌日から利息の支払い日までの期間に応じて計算することとされていたと認められる。

(2)これによれば、第1基本契約及び第2基本契約に基づく債務の弁済は、各貸付けごとに個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく、上記の各基本契約に基づく借入金の全体に対して行われるものと解され、充当の対象となるのはこのような全体としての借入金債務であると解することができる。そうすると、上記の各基本契約は、それらの契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が生じた場合には、弁済当時存在する借入金債務はもとより、その後に発生する新たな借入金債務にも充当する旨の合意を含んでいたと認めるのが相当である(最高裁平成19年6月7日第一小法廷判決・民集61巻4号1537頁参照)。

 そして、上記の各基本契約においてAに過払金が生じた場合に、その過払金の元本は借入金債務に充当されるのに、過払利息については、それと異なり、元本とは別に、同人において被告に支払を請求するなどということは想定されていなかったとみるほかないから、上記の合意は、過払利息についても、それが生じた場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当する趣旨をも含むものであったと認めるのが相当である。」

 「取引1−1及び取引1−2の根拠である第1基本契約は、同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が生じた場合には、上記過払金を、弁済当時存在する他の借入金債務及びその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいたと認められる。

 したがって、取引1−1により生じた過払金は、上記の合意により、取引1−2による借入金債務に充当される。」

 「同人と被告との間で平成21年7月1日にされた合意は、同人において、被告との間で第2基本契約を締結し、その契約に基づいて借り入れた借入金をもって、取引1−2により生じていた借入金を弁済して同取引を終了させ、同取引よりも同人に有利な条件で取引2を継続することにより、実質的には、取引1−2により生じた債務の弁済に係る負担を軽減しつつ、被告との間で、引き続き借入れ及び弁済を繰り返すことができることとするものであったと認めることができる。

 そして、このような上記の合意の内容によれば、その法的性質は、取引1−2により生じた同人の被告に対する借入金を目的とした準消費貸借契約であり、ただ、同人は、単にその借入金を被告に弁済していくだけでなく、被告からも新たな借入れをすることもできることとする特約の付されたものであったと解するのが相当である。」

 

過払い利息の利率と法改正

2020年の民法改正により、過払い利息の利率も裁判ではよく問題になります。

改正民法により法定利率は、令和2年4月1日より3%とされています。

今回の判決では、改正前の平成26年8月1日から発生していた1個の過払金請求権の金額が、その後の貸付け・弁済により変動したものとして、改正後の変動分も含めて5%を適用

ただし、相続人による一括返済分は、改正後に発生した相続人のみに帰属する新たな請求権として3%を適用しています。

 

 「第2基本契約に基づく債務の弁済は、各貸付けごとに個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく、同契約に基づく借入金の全体に対して行われるものであり、充当の対象となるのは、このような全体としての借入金債務であると解される。そして、Aの弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が生じた場合には、過払金は、弁済当時存在する借入金債務及びその後に発生する新たな借入金債務に充当され、過払利息も、その発生後に発生する借入金債務に充当されることとする旨の合意がされたと認められる。

 以上の事情を踏まえると、Aの被告にたいする過払金の返還請求権は、被告に対する支払ごとに、その支払の個数に応じて生じるものではなく、第2基本契約に基づく貸付け及び弁済により、同人の被告に対する過払金返還請求権が生じる場合には、その個数は1個であり、ただ、その請求権の額が、貸付け及び弁済により変動するものとみるのが相当である。

 そうすると、Aの被告に対する過払金の返還請求権は、改正の前である平成26年8月1日に生じたものであるから(弁論の全趣旨)、その過払金について生じる過払利息の利率は、改正に係る平成29年法律第44号附則15条1項により、改正前の民法所定の年5分であることとなる。」

「原告Xは、Aの死後である令和4年6月2日、被告に対して90万9196円を支払ったのであるが、その支払の原資が同人の遺産であり、また、同原告に第三者弁済をする意思がなかったとしても、その支払は同原告がしたものである以上、上記の金銭に係る不当利得返還請求権がAの遺産に帰属するとはいえず、その請求権は同原告にのみ帰属するとものというほかない(そして、上記の不当利得返還請求権は、改正法が施行された後に生じたものであるから、これについての民法704条所定の利息の利率は、改正後の民法所定の年3分である。)。」

 

過払い利息の利率に関しては、裁判所で、法改正後は年3%だと指示されることも少なくありません。争う場合には、法的な主張はこのようになるでしょう。裁判例もまだあまり多くないので、押さえておいた方が良いでしょう。


プロミスに対する過払金のご相談は以下のボタンよりお申し込み下さい。


 

無料相談の予約、お問い合わせは 0120-141-961

弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

オフィス

ジン法律事務所 弁護士法人

代表者:弁護士 石井琢磨

〒243-0018
神奈川県厚木市中町4-14-3
雅光園ビル702号室

TEL:046-297-4055

 

<主要業務エリア>

クリック 相談予約

ジン法律事務所弁護士法人Webサイト

厚木本店
相談会開催中


ジン法律事務所弁護士法人横浜駅前事務所Webサイト

横浜駅前事務所
相談会開催中


動画配信中↓↓


ページトップへ