不法行為の主張
消滅時効に対する主張・不法行為
最高裁平成21年9月4日判決
過払い金を不法行為による損害賠償請求として、以下のように理論構成する方法がありました。
しかしながら、最高裁平成21年9月4日判決が出されたことで、一定の場合を除き、この構成は困難になってしまったといえます。
消滅時効の主張
過払い金の裁判では、貸金業者側から、「過払い金は消滅時効にかかっているから、請求できない」という主張がされることがあります。
過払い金を返せ、という権利が、不当利得返還請求権だとすると、民法167条1項に「債権は、十年間行使しないときは、消滅する。 」と書いてありますので、10年間で時効にかかるという主張がされるわけです。
具体的な場面としては
基本契約などが2つに分断されるとの主張がされ、最初の基本契約の完済により過払い金が発生しているが、分断されるため、2つ目の基本契約には充当されない、1つ目の基本契約が終了してから10年経過しているため、時効である、という主張。
また、最近では、基本契約が続いているのに、その中で10年以上前に発生した過払い金については、時効だという主張もされることがあります。個別進行説などと呼ばれる考え方です。
あとは、完済をしてから10年経過してしまっている場合です。この場合は、後の取引に充当などという主張ができないですから、業者もほぼ時効を主張してきます。
不法行為の主張
このような時効の主張に対して、時効期間がそもそも10年ではないという主張をすることが考えられます。
過払い金を返せという権利が、不当利得返還請求権ではなく、不法行為に基づく損害賠償請求権であると認められると、時効期間が変わってきます。
民法724条
「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」
この条文により、20年経過していなければ、時効ではない、と主張することが考えられます。
過払い金自体が不法行為であると認めた裁判例はまだ少ないですが、過払いなのに請求をすることは不法行為だとして慰謝料の請求を認めた裁判例はいくつか出ており、今後注目の理論構成です。